11月の例会の様子、その3です。今回は大石会員のガン・ボートの作り方です。今回は外板張りの手前までをご報告いたします。
ガンボートの製作
フランスの海事博物館の出版アンクレ(ANCRE)社のARMED-LONG・BOAT- 1834の図面からのスクラッチビルドです。
長さ13mのオールで漕ぐ船に旋回砲4門を船縁に、船首に大砲を1門スライド式の砲架に納めています。
オール受けは18あります。ちょっと意外かもしれませんが、マストを大小3本立てて帆走もできます。
今回はスクラッチビルドですが、似た船のキットがあります。
マンチュアモデルの1/16 1800年武装ランチです。
ガンボート?
「ガンボート?」について編者は、良く知りませんでしたので、大先輩の講義の前座としてチョット解説をします。
船そのものは、ロングボートと呼ばれる積載艇のうち一番大きな小舟です。
ロングボートは後に、ランチに発展します。
今回の船は、船長13m=43フィートとかなり大型です。積載艇はせいぜい30フィートまでですから、沿岸警備艇かなと想像します。
蛇足ですがタイタニックの救難艇が30フィートです。
ロングボートは汎用船で人の移動、水を樽にいれて運ぶ、荷物を運ぶ、船同士の連絡艇、錨を運ぶなど幅広です。
上陸兵を運ぶ時に、支援用の砲としてスイベル(旋回砲:1/2ポンド砲)を1737年に4門積んだのが最初と文献(Arming and Fitting of English Ships of War)にあります。
その後、1795年に旋回砲は18~25ポンドのカロネード砲に変わったと記載されています。
旋回砲でも60kg近くあり、これを船縁に据付けていますから船のバランスは相当悪かったと想像されます。
発砲してよく転覆しないものだと不思議に思います。
カロネード砲は500kg程ありますから30tに満たないロングボートから良く撃てたなと思います。
編者は、この本(ARMED LONGBOAT)を持っていませんので、大砲の大きさが分かりません。
旋回砲は1/2ポンド砲か1ポンド砲だろうと思われます。
大砲は船の大きさからするとせいぜい4ポンドか8ポンド砲と思うのですが、図面からすると12ポンドか18ポンド砲の大きさです。
船に対して随分重い(2t弱)大砲なのです。
文献によると随分大きな大砲を積載していたようです。
19m40tのロングボートに24ポンド砲
Dictionary of Ship Types: Ships, Boats and Rafts Under Oar and Sail
どうやって実際撃ったのか別の機会に紹介したいと思います。
前座はここまでとし、ここから講演です。
今回は外版を張る手前までです。
船体ジグの作成
最初に、型(船体ジグ)を作ります。
カーボン紙を使って図面から板に線図を写し取ります。
基本図のフレームは15本だけですので、フレーム(肋材)の線を追加します。
シーア・プラン(側面線図)と吃水のハーフ・ブレス・プラン(半幅線図)からフレーム断面を作図していきます。
半幅線図からディバイダで長さを正確にフレーム断面図(ボディ・プラン)にプロットしていきます。
プロットした点同士を線でつなげ、線を雲形定規でなだらかなラインに修正していきます。
フレーム図は船体ジグ用の15枚のフレームと実際のフレーズ材(フロアー財+トップティンバー材)30本に使います。
フレームを切り出します。
フレームを糸鋸で切り出して並べていきます。
船首方向に7枚、船尾方向に7枚、中央に1枚の15枚を並べます。
フレーム間フィラー財で詰めて、きれいにサンディングして仕上げれば、船体ジグの完成です。
これが型になります。
キールの作成
ラベット(外板との継ぎ)の部分にはマスキングテープを張ります。
実に綺麗にできますが、ここまで綺麗に仕事をするには経験が必要です。
フレーム(肋材)の作成
フレーム(肋材)を組んでいきますが、一本の角材でフレームを構成するのではなく、実船と同様にフロアー材とトップティンバー材を別々に作り千鳥で組み合わせます。
トップティンバーの位置決めと寸法を船体冶具を使って合わせます。
キッチリと角材も曲げます。
押しピンを使ってトップティンバー材を仮止めしています。
フロアー材とトップティンバー材をクリップでとめて接着しています。
各フロアー材、トップティンバーとも歪まず綺麗に並んでいます。
また、フロアー材とティンバー材の重なり部分が非常にきれいに並んでいます。
キールのセッティング
キールを仮に乗せます。キールの線と実際にフレームがピッタリと一致しています。
ラベットを削り終えたキールに船尾板を付け、船首はフレーム材と凹凸を合わせています。
次に外版を張ってい行きますが、それは次回をお楽しみに。